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中編 - 広田雅将の時計談話 Vol.1 / L'ECHOPPE コンセプター 金子恵治氏

時計専門誌「クロノス」日本版の編集長である広田雅将氏による時計談話。記念すべき第1回目のゲストは、セレクトショップ、L’ECHOPPE のコンセプターである金子恵治氏。

「IWCってオールデンみたいな存在なんですよ。」

広田さん(以下H) お二人で時計マニア向けブランドであるIWCでイベントやるって聞いて、こんな地味な物で凄いなって思っているのですがその点は如何でしょうか?
そのイベントもこう言う物も結構行けるよって言う打ち出しですか?

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金子さん(以下K) IWCを扱う事になったのは、江口さんからの提案でした。けど今回のイベントは、僕の愛用品を一つ一つ紹介していくような内容なので、本来であれば愛用品であるカルティエを出品するのが筋でした。けどIWCの普通すぎる佇まいに、ファッションを掛け合わせたら、何かが生まれる気がして、とりあえず自分で購入して体感してみようと思い、まずは買いました(笑)。イベントのテーマが先走ってそれが愛用品になったんですね。で、実際使ってみたらメチャクチャ気に入ってしまったという流れになります。また、昨今ヴィンテージ時計の価値が上がりすぎてしまって、どんどん手が届かなくなってきてますよね。洋服が好きで時計も、というのは金銭的にかなりキツくなってきてます。けどIWCは僕が興味を持ち始めた頃から安定した価格で比較的買いやすい。服好きも魅了する時計という事は身を持って知ったので(笑)、僕がオススメするにあたり、これしかないなと。

H 僕も昔のIWCが好きで時計の世界に足踏み入れたようなものなんですけど、表現として適切かどうかわからないですけど、昔のIWCって、あれ昔のアメリカ靴に近いんですよ。
イギリス靴に憧れてアメリカ人が作ったオールデンの様に、アメリカ人がスイス時計に憧れて作った時計だし、50年代60年代ってアメリカ的解釈の製品が沢山生まれた時代。
本国よりは粗さがあるけれど、しっかりとした物作りがされていて、別に今のファッションがそんなに詳しいわけじゃないですが。
わりかし地味でかっちり作ってあって、一見、野暮ったさそうだけどよく見たら作りはちょっと良いなみたいな。見せ方によっては抜け感を含め、素晴らしいアイテムになるベースとなるブランドだと思います。
お洒落になるかもしれないけれどちょっとそこは頭を使おうみたいな。金子さんの出番ですね(笑)

K お話をお伺いして確かにスイスの時計なんだけど、アメリカ人の人がしてそうですよね。アメリカは例えばオールデンとかもアメリカ靴であるけど、結局スタイルとしてはイギリスとかの伝統的なものを彼らがああいうふうに、質実剛健作っていく。その靴の例えっていうかはっきりと今おっしゃっていただいて、やっぱそうなんだなって。そう思ったら、魅力はもう完璧そこですよね。

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江口(以下E) 広田さんに質問して良いでしょうか?ブランドとしてのIWCというのは、そのスイスの時計の良い所を取り入れていると思うんですけど、なんかやっぱりパテックだったり軍用時計だったりの良い所を採用し、そのシンプルな佇まいをあえて選んで作ったように見えるんですよ。全然派手なものが一切ないじゃないですか。それっていうのは、こういうブランドコンセプトだったのでしょうか。

H IWCって、新品の値段がわりかし高かったんですよね。オメガなんかより上の感じで。
ある程度そこまで値段が高くて、地味な時計だと買う人って、数本時計を所有している様なそこそこお偉いさんになって、デザイン的に奇抜なものはあんまり作らないみたいな感じですね。
だからそういう意味では手堅い作り。人によっては面白くないとか野暮ったいとか言う人いますけれども、これはこれで何か見せ方変えたらありじゃねみたいな。
あとすごい丈夫なんですよね。本当に。
50年代60年代に作られた自動巻きってあまり巻き上げがされないムーブメントも多くて実際には未完成な物もあるのですが、IWCはデスクワークでも使えちゃう位本当に巻き上げ効率が良くて、更にできてから70年間自動巻きの設計ほとんど変わってないんですよ。

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E それって、今でもペラトン式自動巻きという事ですか?

H そうですね。ペラトン引き継いでるだけじゃなくて、設計そのものがほぼ同じ。部品も長持ちするから、本当に良くできてるグッドイヤーウェルト製法の靴みたいな感じです。

K 本当にあの製法もずっと変わってないですよね。張り替えればずっと使える素晴らしい技術です。

H IWCの時計は、ソールが硬く、歩いても減らない靴みたいな感じの作りで、初心者の人が使うとすごくいいなと、どれもおすすめですね。
例えば、パテックフィリップの自動巻きとか、もの凄く良かったりするんですけど、あれはあれでちょっとなんかね、工芸品みたいな感じなので、扱いがおかしいと壊れたりとか、維持費高かったりとかするわけですけど。ここら辺はIWCがとても楽。ただアメリカ靴なので、そこをおしゃれにするのは、付け方が重要ですよね。

K そうなんすよ。このままだと本当おじさんの時計なので、だけどそこはやっぱりファッションと必ず対になるんです。そこはやっぱり僕らの腕の見せ所じゃないけど、そこで何か一緒にお客さんと楽しさを分かち合えたらいいなと思っていて。それで江口さんと相談をしてキュリオスキュリオさんのストラップブランドである [Accurate Form / アキュレイトフォルム] の台座付きレザーブレスを採用してスタイルのある佇まいに仕上げました。一本一本合うレザーを選んだのですが、とても楽しかったです。

H 台座がね、キュリオスキュリオのストラップはよく考えられていて、台座が前から見えてしまうとやっぱりミリタリーになっちゃうじゃないですか。すごくありだと思うんですよね。
ストラップでも遊べるっていう点もすごく素材として、ベーシックな遊びがいくらでもあるなっていう印象を正直持ちました。時計自体は何本くらい集めたんですか?

E 何とかかき集めて20本位はご用意が出来そうです。金子さんが色を全部選んで下さって、今回説明して頂いているのですが。やっぱりこの台座付きレザーストラップは時計が地肌に付かないと言う点でもとても理に適っておりますし、IWCのスタンダードな顔立ちにレザーの良い質感がプラスされてとても格上げされたなと感じています。私も私物時計に普通に使っている物ですし、時計好きにはこれからスタンダードになっていくと思います。
時計のシンプルな顔出しを邪魔していないですし、マークⅪの持つ軍用時計としての役割ともナトーストラップは整合性があるし、この組み合わせは最高だと思ってます。
時計自体の完成度は勿論、レザーストラップまで拘って、そこに時計業界の人間では伝えきれない様な金子さんのフィルターを通す事で、これにどんな服合わせようか?って考えて下さるんじゃないかと思ってワクワクしています。

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H ですよね。なかなか挑戦的な感じで僕はすごく好きです。キュリオスキュリオのストラップってステッチが細かいので、昔の作りなんですよね。基本的に。今のストラップはステッチを大きくするわけですけれども、だから年代的にはドンピシャ!合っているなと、革の感じも凄く近くて、「だけど今」というのが、面白いなと思うんですよね、この色の組み合わせとか含めて。
この時計を、こういう風な楽しみ方ができる人って少ないので、とても好印象です。

E いや~嬉しいお言葉です。ちなみにお2人は、「このモデルがいい!」というもの、あったりしますか?。

H おすすめは、Cal.853(ペラトン式オートマチックムーブメント)ですね。
これ綺麗な個体だな。ちょっと日付合わせも面倒くさいんですけれども、個人的にはこの「THE おっさん時計」って言う佇まいがいいんですよね。
私はこのRef.818(下写真の物)と昔からよく買ったef.810がお勧めですね。

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H IWCってバーインデックスと言って時間を表す文字盤のパーツが棒状の物が多く、ファッション的な目線で言うと、ローマ数字って貴族の数字なんで、凄くフォーマルなんですよ。

K なるほど!だからカルティエは貴族階級の愛用品だからローマンダイヤルばかりなんですね。

H ものすごいフォーマルなんですね。軍用時計ってアラビア数字が多いじゃないですか。元々計算するための数字だから、わりかし一般的なもので普通性のある数字なんですよね。
ロレックスが早い段階からバーインデックスを使ったっていうのは、わりかしどこでも使える時計の象徴になってしまっていて、そういう意味では、IWCのバーの時計って、デザインとしてはどこでも当てはまる。ユニバーサルデザインなんですよね。

E めちゃくちゃ勉強になります!

H でも金子さんそこまで目利きでいらっしゃってカルティエ買われて、こちらも自転車乗ったりとか、色々な物付けていらっしゃいますけど、今後どういう時計を使ってみたいですか?

K 本当カルティエばっかしてたんですよ。そこからIWC付けたら、最初に「見やすい!」と思ってびっくりして。ギアとして使っていたデジタル時計と比べても、明らかにぱっとすぐわかるっていうことに驚いて、なんかもう使いやすさにファッションがどうのこうのとか言いつつも、もう道具として結構これも癖になっちゃってて。
僕ももちろんパテックとか憧れはあったんですが、カルティエの値段も高騰しており高級時計も好きなのですが、やっぱりこの等身大の心地よさっていうのが、凄く今いいなと思うんです。
広田さんがおっしゃられた通り、オールデンがそうである様に、使う人によって道具であったり、ドレスアイテムであったり。
IWC好きの人の感覚が解って来た気がしていて、時計に関しても些細な違いを見つけて買い足してみたいなと思っています。

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H 僕も、周りの友達に「なんで同じような時計を死ぬほど買ってるの?」って言われるんですよ。IWCの手巻きRef.810Aってやつなんですけど。今まで、何十本買ったかな?
今も会社の机にも入ってますけど、勝手に増えちゃうんですよ。ひどい時は同時に4本位持ってた時もありました(笑)

K 洋服好きな人も同じような物いっぱい買いますもんね。501とかやっぱ、いっぱいあります。

H そうそうそう。正にそんな感じですよ。

H だと思います。だから多分、今回のIWCとレザーストラップの組み合わせは単純にかっこいいし、時計についても理由を理解出来たら、ハマる人は、ハマるんじゃないかな。
僕ら時計の世界の人たちってやっぱりそのファッションが好きな人にどうやって訴求するのかっていう努力を怠ってきたような気がするんですよね。
「時計好きが買えばいいじゃん。」みたいなのがあったけど、金子さんとか江口さんとかによって何か変わっていくんじゃないのかなっていう気は凄くしてます。
全てIWCというのは、本当に凄く楽しいです。

K 僕らの渋谷宮下パークにあるお店で言うと、白シャツが凄い掛かっていて、でもよく見ると12パターンのサイズがあったり。
その中からちょっとした数センチの違いをお客さんが気分に合わせて吟味して買って行くような感覚でやってるんです。
なのでこういう物も、些細な違いを見つけて気に入って購入して貰える様に、白シャツと同じとこにフラットに置きたいですよね。
服ではないけれど、何か同列で、猛烈に扱いたい気持ちが。

E いや~本当に世界観に嵌ってますよね。自分自身も金子さん企画の物を色々見させて頂いて思うんですけど、物を楽しむ感覚に凄く長けた方だな~といつも思うんです。
LEのシャツの数センチと、時計の顔の数ミリの違い。同じ事ですよね。

H 凄いなぁ。確かに白シャツずらっと並べるんだったら、この世界良いですね。

K IWC以外成し得ないですよね。この、細かい違い。逆に言えば全部一緒って思われちゃうんですけど(笑)

H そこを実際にお話ししながらお客様と見て行こうみたいなイベントになる訳ですね。

K どれがいい。これがいいみたいな。よく見ていくと、確かに1個1個違うよなぁ。みたいな。

E もちろんさっきのシャツの話なんですけど、金子さんがやられている事は、Mサイズの中で、丈が長いとか短いとか、身ごろが広いとか細いとか。
みんなが普通に持っている白シャツなのに、そこに選ぶと言う、楽しみがレショップにはあって。本当に凄く楽しいんです。

H かなりぶっ飛んでて素晴らしいですね。

K ここにいる僕らだけでも、体型が全然違くて。
身長が高い人、低い人、痩せてる人、太ってる人とかでも、サイズ全然違うし。
そこをどんどんアジャストしていこうと思ったら、12型あれば大体160センチから185センチで、体重も50何キロから多分85キロぐらいまで、網羅できるなって言う仕組みを作ったんですよね。
それに遊びをプラスすると、背が低い人がエクストラワイドのショートというのを選べば、オーダーしたみたいな着方になるし。
わざと女性とかがそういうものを着て、ファッションとしてたっぷり着るとかも、今の時代としてはありだし。
それを楽しんでやってたりするんです。

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E 見た目にプラスアルファの事ですけど、初めてアンティークウォッチ買われる方もお客様としていらっしゃると思いますし、その中で自分自身も明らかに非防水の物付けて、文字盤ダメにしちゃうとかも全然過去にはあったので、できる限りケアしながら、丁寧に楽しめたら良いんですよね。IWCの顔はミニマル過ぎるけど、このレザーブレスを付ける事で野暮ったくならず、ちゃんと時計を大事にしてる感じも出て、伝わると思います。きちんとご説明をして販売したいです。

後編に続く

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前編 - 広田雅将の時計談話 Vol.1 / L'ECHOPPE コンセプター 金子恵治氏
中編 - 広田雅将の時計談話 Vol.1 / L'ECHOPPE コンセプター 金子恵治氏
後編 - 広田雅将の時計談話 Vol.1 / L'ECHOPPE コンセプター 金子恵治氏