LANGUAGE
  • 日本語
  • English
  • 简体中文
  • 繁體中文
  • 한국어

TOPICS

TOPICS SEARCH

「時計と制服、その先にあるライフスタイル」White Mountaineeringデザイナー・相澤さんインタビュー

2025年7月18日、渋谷パルコにオープンした「江口洋品店 江口時計店」。
その新店舗の制服をデザインしたのは、White Mountaineeringのデザイナー相澤陽介さんだ。ファッションと時計、そして生活の中でのデザインについて、相澤さんに話を伺った。

——まず今回の制服制作についてお聞かせください。
相澤:
制服って毎日着るものじゃないですか。だから「きっちりしすぎると逆に不便になる」んです。シワになりやすいとか、硬すぎて動きづらいとか。それを避けるために、最初からワッシャー感のある素材を使って「味」として楽しめるようにしました。
時計だって新品ピカピカより、少し使い込まれた感じが魅力だったりするでしょう? それに近い考え方ですね。
それと、江口さんから「女性スタッフが着ても成立するものを」というリクエストがあって。そこをどうシルエットに落とし込むかは結構悩みました。
最終的にはホワイトマウンテニアリングらしい機能性と遊び心を取り入れて、制服というより「コラボレーションのアイテム」として仕上げた感じです。

——今回のプロジェクトのきっかけは、どのようなものだったのでしょう?
相澤:
店主の江口大介さんとは1年ほど前にカルティエのイベントで知り合って連絡を取るようになり、ある日の居酒屋での会話で制服の依頼を受けました。
江口さんは渋谷の松濤にハイエンドな時計を置いて、来店に予約が必要なお店をオープンさせた後だったのですが、「若い人が50万円前後までの予算で、ヴィンテージ時計をもう少し気軽に買える店もつくりたい」と言ったのです。その考えがすごく面白いなと思って。
高額なヴィンテージ時計を扱う店も大事だけど、若い世代が入っていける場所だってあっていいじゃないと感じていたから。そんな江口さんの発想に共感して、一緒にやってみようと決めました。

——制服をデザインする上で意識したことは?
相澤:
ゼロから制服を作るというよりは、ホワイトマウンテニアリングのギミックやディテールを織り交ぜながら、店の世界観に合うものにすること。
僕の服は「一見シンプルに見えて、よく見るとひとクセある」という部分を大事にしています。江口さんのキャラクターにもそういうニュアンスを感じるんです。ノーブルさとB級グルメ的な親しみやすさの同居というか。それを制服に落とし込みたかったですね。

——ご自身と時計との関わりについても伺いたいです。最初に強く記憶に残っている一本は?
相澤:
時計はずっと好きなので、これまで新品、現行品問わず様々な時計を手にしてきましたが、古い時計ではイタリアの小さなアンティークウォッチ店で買ったゼニスは思い出深い1本です。
僕はイタリアブランドとも何度も仕事を重ねてきたのですが、縫製工場で働くセルビア出身の女性の紹介で、彼女の親族がやっていたお店で購入しました。色んな時計が雑多に置かれていて、ソビエト製のものみたいな見たこともないブランドのものもたくさんあった中で見つけたものです。古いけれど割とサイズが大きくて、しっくりきました。
もっとも、帰国するとすぐ動かなくなって、東京の時計店でそれなりの修理代をお支払いして、いまは元気に動いてくれています。
この時計を見ると、当時の一緒に仕事をしたイタリアの工場の人々たちの顔や、あの頃の記憶も蘇るんです。時計自体は決して高価ではなかったけれど、自分の人生の一部みたいな、大切な一本です。

——時計を選ぶ基準は?
相澤:
直感ですね。詳しいスペックやヒストリーは二の次で、「今欲しいと思えるかどうか」。
国産か海外ブランドか、機械式かクオーツかもバラバラで、ステータスには全く興味がなく、できるだけ人と同じ時計は避けたい。もちろんロレックスも持っていますが、むしろ「ちょっと外れたもの」の方に惹かれるんです。
仕事柄デザインが凝ったものなどは色違いなんかでも買います。それから、こだわりとしては現行品は二次流通では買いません。絶対に直営店で買いたい。

「時計と制服、その先にあるライフスタイル」White Mountaineering相澤氏インタビュー

——お父様との思い出も時計選びに影響していますか?
相澤:
父はアメカジっぽいスタイルが好きで、バブアーやスニーカーに合わせるカジュアルな時計をよくしていました。その姿を見て育ったのは大きいですね。僕自身も小さい頃から流行りものには興味がなくて、父が選んでくれた服や音楽から自然に美意識が育まれた気がします。
ドレスウォッチでもスポーツウォッチでも使える、カルティエのサントス・オクタゴンの自動巻は父から受け継いだものです。実は僕には腕周りのサイズが小さくて合わなかったのですが、江口さんが保管パーツの中のストックからコマを足してくれて、今は自分でもつけることが可能になりました。

「時計と制服、その先にあるライフスタイル」White Mountaineering相澤氏インタビュー

——江口時計店の新しい店舗について、どんな思いがありますか?
相澤:
時計って、すごく高いものを扱っていても、店の雰囲気がミスマッチだと魅力が半減してしまう。江口洋品店 江口時計店は、時計だけでなくインテリアやファッション全体で統一感を持っているのが素晴らしいと思います。時計を「生活のスタイル」として提案している店ですね。そういう空間に自分のデザインを加えられたのは嬉しいし、これからどう育っていくかも楽しみです。

——最後に、時計と服をつなぐ共通点とは
相澤:
どちらも「時間を一緒に過ごす存在」だと思います。服も時計も、使い込むほどに自分の生活に馴染んでいく。今回の制服もそういう風に着てもらえたら嬉しいですね。

Special Thanks.
White Mountaineering
🔗 HP / INSTAGRAM 🔗相澤さんINSTAGRAM
Interview & Text
後藤洋平(朝日新聞編集委員)

______________________________________
江口洋品店 江口時計店 渋谷パルコ 店舗情報
住所:〒150-8377 
東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ3F
TEL:03-6416-1247
営業時間:12:00-20:00
定休日:第二・第四火曜日
E-mail:info@eguchi-store.jp
HP:https://eguchi-store.jp
INSTAGRAM:@eguchistore_shibuyaparco
______________________________________