当店でも馴染み深く、多くのお客様に愛されているカルティエ。
いまや腕時計のイメージも強いブランドですが、その原点はジュエリーのメゾンとしてのスタートでした。
創業は1847年。“世界五大ジュエラー”と称されるようになるずっと前のことです。
当時のカルティエは、フランス王室や貴族のために、格式あるジュエリーを手がけていました。
とくに、ダイヤモンドをふんだんにあしらったティアラの制作を得意としていたと言われています。
そんなカルティエが、どのようにしてダイヤモンドと深く結びついていったのか。
今回は、その魅力的な歩みを少しだけ紐解いてみたいと思います。

カルティエが最初に手にしたのは、インドやブラジルから届く選りすぐりの宝石たち。
インドの鉱山で採れるダイヤモンド、ブラジルのエメラルドやルビーは、その色彩と品質において、当時のヨーロッパでは別格の存在でした。
その美しさと希少性を見抜いたカルティエは、これらの宝石を贅沢に使い、王族や貴族のために華やかで壮麗なジュエリーを生み出していきます。
ブランドとしてのアイコンがまだ定まっていなかった時代にもかかわらず、素材を見極める眼と洗練されたデザイン力は、すでに“世界のカルティエ”としての風格を感じさせますね。

19世紀後半、南アフリカでダイヤモンド鉱山が発見されると、ジュエリー界に大きな変化が訪れます。
カルティエもこの新たな輝きにいち早く注目し、ダイヤモンドの美しさを最大限に引き出すため、独自のカット技術を追求していきました。
繊細で革新的な技術の積み重ねにより、カルティエのジュエリーは瞬く間に王侯貴族の憧れとなり、ブランドの名声は世界中へと広がっていきます。

たとえばカルティエのダイヤモンドには、一般的なラウンドカットだけにとどまらず、石ひとつひとつの個性に寄り添った独自のカットが施されています。
光の反射や屈折がもっとも美しく見えるよう、ファセット(切子面)の角度や配置をミクロ単位で微調整。
ときには、石の中心に光が自然と集まるように計算されたカスタマイズが施されることもあります。
こうした緻密な作業の積み重ねが、ただ“きらめく”だけではない、奥行きのある光の表情を生み出しているのです。
まるでダイヤモンドの中に、ひとつの物語が封じ込められているかのような。そんな印象を与えるのも、カルティエならではの美学と技術のなせる技なのかもしれません。

現在ではカルティエに欠かせない存在となったダイヤモンド。
その選定においてカルティエが重視しているのは、一般的な4C(カラット・カット・カラー・クラリティ)だけではなく、「美しさそのもの」を基準とする独自の哲学のもと、数字では測れない価値にも目を向けています。

当店でも数は多くありませんが、ダイヤモンドがあしらわれた希少なヴィンテージジュエリーを取り扱っております。カルティエの長い歴史と、職人技が息づくその美しさを、ぜひ手に取って感じていただければ幸いです。