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オーバーホール/ネジ抜き/オーデマ・ピゲ/18kラウンドケース/CAL.2003/1 /Audemars Piguet/Overhaul

こんにちは。 いつも当店をご利用いただきまして誠にありがとうございます。 最近とてもありがたいことに修理のご依頼を数多く頂いていて、久しぶりの投稿になってしまいました。 最新号のHODINKEE Japan Edition Vol.4にて今回、フレデリック・ピゲ Cal.21を使用したムーブメント、およびそのフォロワーキャリバーを搭載した時計撮影の協力店舗として、全ての時計を当店からご提供させて頂きましたので、是非ご覧ください。 Link→HODINKEE.jp 今回はAudemars Piguet cal.2003のオーバーホール・ネジ抜き作業です。 cal.2003のベースキャリバーはお馴染みのメーカー、ジャガー・ルクルトのcal.803です。 当店では珍しいシースルーバックケースになります。 所謂、裏スケと呼ばれる裏蓋ですね。 ヴィンテージ時計を多く作業していると、ほぼ裏スケではない裏蓋なので新鮮な気持ちになります。 この個体は90年代の時計なので、後20年位経つとヴィンテージの分類になってくるのではないでしょうか?? 今はネオヴィンテージ的な立ち位置だと思います。  _600_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526278.jpg  _678_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526277.jpg 薄さがわかりやすい様に500円と比較してみました。  _855_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526302.jpg  _796_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526299.jpg 磁気帯びしているので、磁気をまずは抜きます。(針は元々1本取れていました。1枚目オーバーホール後の画像で、緩んでいないか確認し取り付けています。)  _288_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526300.jpg 外見から見てもゴミ入りしているので、初期の精度はあまり調子は良くないです。  _834_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526306.jpg  _623_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526301.jpg ベゼルを外すとガラスの内側に針が擦っていた跡がわかります。 全体的に薄い為、針同士の間隔がシビアなので擦ってしまったのかと思います。  _772_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526304.jpg より薄くする為だと思いますが、通常は文字盤とムーブメントに固定する為に文字盤側に固定足があるのですが、この文字盤には足がありません。 蓋の様な形状になっています。 ミドルケースの外側に隙間があり、文字盤をその隙間に入れる特殊な止め方になっています。(赤い線箇所、円形全体に隙間があります。)  _386_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526298.jpg  _230_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526295.jpg  _791_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526303.jpg ケースからムーブメントを取り出そうと、ネジを回したら折れました(´;ω;`) サビ等は見受けられなかったのですが、頭が大きくネジ部が細いネジは力が掛り易やすく折れやすい傾向にあります。 特に大きな不具合が無い場合でも折れる可能性があるので、ご理解いただけると幸いです。 後で抜くとしてひとまずムーブ鑑賞に浸ります。 高級機らしくパーツの形状が美しいです。  _36_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526294.jpg  _794_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526292.jpg ムーブと500円を比べるとより薄さがわかるかと思います。 (平成14年の500円玉はおおよそ1.80mmです。)  _671_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526296.jpg 不具合がないか確認しながら分解を進めていきます。 薄型ムーブメントの特徴として目立つ箇所は、香箱と呼ばれるパーツが宙づりで組み込まれている事です。(吊り下げ式・片持ち支持式と呼ばれるようです。) 通常は受けと地板に香箱の真が収まるルビーがありますが、外すと地板がくり抜かれているのがわかります。 支えているのが1軸のみなので動力(ゼンマイの力)が不安定になり、動作させるのが難しいと思いますが、しっかりと機能しています。 単純にすごくないですか?? 設計・製造の凄みが伝わりますね。  _479_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526291.jpg 油の残り具合を確認してみたところ、残ってはいますがホコリが多く付着していました。  _809_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526289.jpg パーツを分解したら先ほど折れたネジを抜く作業をします。。。 キッチンハイターを折れているネジ部のみに少量ずつ流し込み、鉄素材をあえてサビさせて痩せさせます。 時間はかかりますが根気よく少量流し込み続けると、サビの浸食が進みネジがガリガリになり抜けやすくなります。 (地板は真鍮素材・真鍮には影響がない事を確認して使用しています。)  _478_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526288.jpg 抜けました(´;ω;`) ネジ抜きは本当に骨の折れる作業です。。。  _143_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526287.jpg 分解したら刷毛で手洗いをして超音波洗浄機で洗浄します。 洗浄後は組立・注油を行っていきます。 薄型ムーブメントは薄いが故に、ネジ締めの力加減でパーツがゆがんでしまったりする場合があるので、慎重に組み立てていきます。  _543_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526285.jpg  _179_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526290.jpg  _205_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526284.jpg ちなみにこのキャリバーは18石です。 (使われているルビーの数です。)  _905_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526293.jpg 機械部の組立が完了したら精度・振り角を確認します。  _744_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526282.jpg だいぶ良くなったのを確認できたので、精度調整を行い針付けをします。  _894_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526281.jpg  _991_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526280.jpg  _176_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526279.jpg その後はケーシングして1週間のランニングテストを行い、問題が無ければ完了になります。  _358_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526308.jpg  _97_https://eguchi-store.jp/eguchiwp/wp-content/uploads/S__153526276.jpg 最近、リシャール・ミルで世界最薄の時計が発表され、ムーブメントの厚みがなんと1.18mmとの事です!(ケース込みで1.75mm) 技術の進歩は凄いですね。。。 薄型ムーブメントの歴史はより薄くなって紡いでいかれていますね。 最新の薄型ムーブメントも素晴らしいですが、前時代のAP.2003やFP21など(更にその前のムーブメント勿論ですが)技術をかけて薄さに挑戦してきた歴史を作業をしながら感じられるので、なんか愛おしくなります。 Audemars Piguet Cal.2003 オーバーホールMW ¥49,500~(税込) ネジ抜き作業 要見積り 皆様の時計修理お待ちしております。