いつも当店をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
こんにちは。時計技師の永田です。
金木犀の香りが心地良い季節になってまいりました。
気温差がある季節ですので皆様ご体調を崩さない様にお気をつけください。
今回はオーデマピゲのCAL.20001/のオーバーホール+ブレゲ針サビ取り+針青焼きです。
アラビア数字にブレゲ針の組み合わせでとてもクラシカルな組み合わせです。
18KWGケースもあいまってとても上品な装いです。
比較的きれいな状態かと思いきや、分針に赤サビが発生していました、、、、
前回の記事でも説明した赤サビです。
今回はとても厄介な箇所に発生しています。
外装に比べると、とても小さく細く折ってしまう可能性が有り除去が難しいです。
リスクが高いのであまり行いたくはない作業ですが、時計の美観に大きく関わるので修正を試みてみました。
まず分針のサビを爪楊枝で大まかに除去していきます。
だいぶサビが進行していて表面が凸凹しているので仕方なく番手の粗いヤスリで表面を均して見ることにしました。
まだ少し凸凹残っていますね、、、、
顕微鏡でみているのでとても目立ちます。
肉眼だとここまでくると違和感はないとは思いますが、念の為もう少し攻めてみました。
だいぶ均等になりました。
均等になったのは良いのですが、このままではヤスリの粗さが残ってしまうので徐々に番手を上げていき鏡面に磨いていきます。
(ヤスリの番手には数字が有ります。数字が低い程粗く、高くなるにつれて筋めが細かくなり鏡面になっていきます。例えば最初の表面が400番だとするといきなり3000番をかけても400番の筋目が残り綺麗な鏡面にはなりません。徐々に番手を上げて磨くのでとても時間がかかります、、、)
だいぶ鏡面になったので次は残っている青焼きの部分を緑色の魔法の溶剤で落とします。
次にアルコールランプで熱して着色していきます。
熱すると藁色(黄色っぽい)→茶色→紫→青色→水色→銀色の順で変化していきます。
主観ですが、熱が高くなるにつれて変化する時間はとても速いので、良い感じの濃い青にするのは難しいです、、、
またムラが出やすいので色を均等にするのも一苦労です。(良いやり方あったら誰か教えてください、、、)
修正が完了しました。
Before
after
針の修正がひとまず完了したので次はムーブメントをオーバーホールしていきます。
ケースからムーブメントを取り出し、文字盤を外します。
文字盤も14kみたいです。
さすが巷で良く言われる三大ブランドと言った所でしょうか、、、
CAL.k2001/1Aはジャガールクルト製のCAL.818がベースです。
手元に818があったので並べてみました。(左が818、右がK2001/1A)
ジャイロマックステンプになっていたりと変更されている所は色々と有りますが、かなり専門的な内容になるので割愛します。
またバセロンでも818ベースのCAL.k1014があります。
初めのムーブメント状態の精度を確認後、不具合箇所がないか確認しながら分解をしていきます。
部品の細部までペルラージュ装飾が施されており美しいです。(鱗状の連続した模様です。高級機に良く施されている装飾です。)
これといった不具合は見当たらなかったので、洗浄します。
洗浄後、組み上げと注油をしていきます。
精度調整をします。
先程、修正した針を取り付けてケーシングします。
その後1週間のランテスト後、不具合がなければ完了です。
搭載されているCAL.2001/1Aは外観や細かい仕上げがとても綺麗です。
また大体のムーブメントは、角穴車・丸穴車と呼ばれる大きな歯車が受けの上にあるのに対して、下に隠れているのでスッキリとした印象です。
調速機(テンプ)もチューンアップされています。
ベースが元々高級機のCAL.818だけありますね。
針のサビ取り・青焼きに関しては、形状・サビの状態によって修正不可の場合もございますので、もし希望される場合は要相談という形で承らせていただきます。(修正不可としてお断りさせていただく場合もございますが、違う方法を考える等出来る限りお力になれる様に努力いたします。)
サビに関しては前回同様、お使いになられる際は水気に十分気をつけ日頃からケアして頂き、定期的なメンテナンスをお願いいたします。
車検感覚で時計もメンテナンスしていただけると幸いです。
オーデマ・ピゲ手巻きオーバーホール¥40,000~+TAX(部品代別途請求)
針サビ取り・青焼き 要相談(別途料金)
皆様の時計の修理お待ちしています。