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Patek Philippe Pocket Watch/Geneva Stop Making/パテックフィリップ懐中時計/ゼネバストップ製作

いつも江口洋品店・江口時計店 松濤をご利用頂きまして、誠に有難う御座います。

今回は変わった修理をご紹介します。古い懐中時計に入っているゼネバストップという特徴的なパーツがあります。
役割は主に2点あります。
①ゼンマイの巻き始めと巻き終わりの大きくトルクが変化する箇所をゼネバストップで規制して、安定した箇所のトルクを使い精度を安定させる。
②ゼンマイの巻きすぎ防止。
ゼンマイの巻きすぎ防止が役割としてわかりやすいかと思います。

今回のパテックフィリップはゼネバストップが元々入っておらず、初めから製作をしてみました。
当店ではネジ・巻き芯・天真・裏押さえなど製作しておりますが、今回のような複雑な形状をした部品を製作する機会は少ないので挑戦してみました。

まずは設計図を作成しました。ネジなどはあまり複雑な形状ではないので、手書きで大体の寸法を書いて製作しますがゼネバストップは形状が複雑な為、正確な寸法が必要でした。
設計が得意な技術者が在籍しているので作成してもらいました。

設計図をもとに旋盤で丸いスチール棒を切削していきます。

ある程度の形になったら歯切りをしていきます。
刃も今回のゼネバストップの形になる様に製作しています。
特殊なパーツは専用工具から製作する必要があるのでとても時間がかかります、、、、

難しい作業なので、みんなで相談しながら作業を進めていきます。

歯切りを終えると次はネジが入る穴をあけ、本体の棒から切り離します。

まだ切削痕や金属バリがあるので、形をととのえます。

ひとまず形になったので、動作するか確認をしてみます。

ちなみにゼンマイの画像です。
ゼンマイは鉄で出来ており青く焼かれています。趣があっていいですね、、、

ある程度の弾性を持たせるために焼き入れ・焼き戻しを行います。
焼入れ・焼き戻しについては以前紹介したコラムをご覧ください。
LINK→Patek Philippe/Calatrava/overhaul/Parts Making/cal.12-400

焼き戻しをします。

最終仕上げを施し嚙み合わせをチェックしてみると、動作も問題なさそうです。

かなり苦戦しましたが、無事に完成しました。
ゼネバストップは古い懐中時計によく入っているパーツですが、破損している事が多いです。
設計図を作成・専用工具の製作・旋盤で切削穴あけ作業・仮仕上げ・動作確認・焼入れ焼き戻し加工・最終仕上げ・動作チェックと今回のような複雑な形状のパーツを製作するにあたって様々な工程があります。
オーバーホールは定期的なメンテナンスで、時計を良好な状態に保つために行います。
修理は時計の不具合を解消するために行う作業です。
どちらも時計の寿命を延ばすために重要ですが、オーバーホールは予防的、修理は問題解決的という違いがあります。
将来、交換パーツが少なくなっていく可能性を考えると、今回の製作は良い経験になり時計修理の重要性が増していくと感じられる事案でした。
これからも時計の健康寿命を延ばす為に予防(オーバーホール)・問題解決(修理)のお力になれる様に、スタッフ一同より技術を高めていきたいと思います。

お客様の大事な時計が末永くご使用して頂ける様、お手伝いできればと思いますので、お困りの方はご相談ください。
修理のご依頼をお待ちしております。

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