1960年代のエルメスは、馬具工房としてのクラフツマンシップを礎にしながら、ジュエリーやプレタポルテの分野へと静かに歩みを進めていった時代。過剰な装飾を避け、構築的でありながらもどこか詩的な「機能美」の哲学が、この頃のジュエリーデザインには色濃く映し出されています。バッグやスカーフといった実用品に加え、アートピースのように身につける“オブジェ”としてのジュエリーを打ち出し始めたのもこの時期といわれています。

今回ご紹介するヴィンテージリングは、「BAGUE CEINTURE（バグ・サンチュール）」とも呼ばれる一点。古き良き時代のエスプリをそのまま指先に宿したような存在感です。“サンチュール＝ベルト”をモチーフにし、エルメスの馬具由来の美学を感じさせながら、優美な曲線を描いています。

イーグルのホールマークとHermesのロゴ刻印から、このリングがAU750（イエローゴールド）製の1960年代頃のアイテムであることが推測できます。繊細に仕上げられたフォルムは、時代を経てもなお色褪せず、現代の洗練されたミニマルスタイルにも自然に調和します。

ヴィンテージ・エルメスの魅力は、タイムレスなデザイン、卓越した職人技、そして今後も価値が上がり続けるであろう希少性にあります。現行品にはない個性が、世代を超えて人々を惹きつけてやまない理由です。是非店頭で実際に手に取り、その美しさと存在感をご確認ください。