高級馬具工房として1837年に創業したエルメスには、馬にまつわるモチーフを取り入れたアイテムが数多く存在します。1927年、エルメスは初のジュエリー作品として、馬具の「銜（はみ）」から着想を得たブレスレット「フィレ・ドゥ・セル」を発表しました。このデザインは、ブランドの原点である馬具製造への誇りと敬意を象徴するものです。馬銜（horsebit）は、馬の口に装着する金属製の器具であり、乗り手と馬との信頼関係や調和を象徴するパーツ。当時はまだジュエリーメゾンではなかったエルメスが、馬具モチーフをジュエリーに取り入れたことはブランドのデザイン哲学の始まりとも言えるでしょう。

今回ご紹介するのは、「コンビリング」とも呼ばれるホースビットモチーフのヴィンテージリング。輝きのあるイエローゴールドと、落ち着いたシルバーの贅沢なコンビネーションが魅力です。立体感のあるフォルムと細部のディテールは、ヴィンテージジュエリーならではの深みを感じさせてくれます。また、猪＆イーグルのホールマークとフランス公認工房の刻印が確認できることから、本作は90年代頃のK18(AU750)製＆SV925製アイテムと推測されます。

贅沢な素材感と洗練されたシンプルさを併せ持つこのリングは、どんなスタイルにも自然に溶け込み、手元に気品を添えてくれる存在です。エルメスジュエリーのルーツともいえる馬具モチーフは、一生ものとして愛され続ける名品。是非店頭で、時代を超えたその魅力をご覧ください。