1837年に高級馬具工房として創業したエルメスは、1927年に初のジュエリーを発表しました。ラインスタート当初から、馬具や船の碇といった身近なデザインをジュエリーに取り入れています。エルメスの多くのデザインは、馬術や航海といったテーマからインスピレーションを得ており、その象徴的な存在が「シェーヌ・ダンクル(Chaîne d'Ancre)」です。1937年、当時のエルメス代表であったロベール・デュマ氏が海岸を散策中に錨の鎖から着想を得たとされるこのデザインは、エルメスジュエリーの代表的なアイコンとなりました。エルメスのヴィンテージジュエリーには、シェーヌ・ダンクル以外にも隠れた名品と呼ばれる人気アイテムが数多く存在します。
その一つがトルサードコレクション。1953年ごろに誕生したとされ、トルサードはフランス語で「ねじれ」を意味します。その名の通り、螺旋状に組み合わされた複雑なデザインが特徴的で、職人技が光る逸品です。ヴィンテージエルメスジュエリーの魅力は、タイムレスなデザイン・卓越した職人技・希少性の三拍子が揃っている点にあります。現行品にはない独自の味わいがあり、多くの人を魅了し続けています。複雑に絡み合うデザインは、エルメスのジュエリー職人の高度な技術が不可欠であり、それを体現したコレクションといえるでしょう。
ホールマークはミネルヴァ、ロザンジュのフランス公認工房マークやHermès刻印が確認できることから、このリングが1970年代頃のものと推測されます。エルメスのクラフツマンシップと「タイムレスな価値」という哲学が反映されたジュエリーを、ぜひ店頭でご覧ください。