エルメスの歴史は、1837年にティエリー・エルメスがパリで創業した馬具工房に遡ります。頑丈で美しい馬具は王侯貴族にも愛用され、その卓越した技術は早くから高く評価されていました。やがて自動車の普及により馬具の需要が減少すると、エルメスはその優れた皮革技術を活かし、バッグやウェアへと展開していきます。創業当初から「長く使える高品質なものづくり」を追求し、厳選された素材を用いることで、その哲学を受け継いできました。

2003年からエルメスのウィメンズ・プレタポルテのアーティスティック・ディレクターを務めたジャン＝ポール・ゴルチエ氏は、ブランドの歴史において重要な役割を果たしました。1980年代から「ファッション界の異端児」として知られるゴルチエ氏は、独創的なデザイン、ジェンダーレスな視点、ストリートカルチャーを取り入れたスタイルで世界的な名声を確立。一方で、伝統的なクラフツマンシップを誇るエルメスとの組み合わせは、一見すると意外にも思えましたが、このコラボレーションによってエルメスのプレタポルテは新たな魅力を獲得し、時代を超えて愛されるスタイルを築きました。

今回ご紹介するトレンチコートは、そんなゴルチエ期のアイテムのひとつ。細部にまでこだわった緻密な設計により、肩のラインやウエストのシェイプが美しく際立つシルエットが魅力です。エルメスオリジナルのボタンがアクセントとなり、ワンポイントの個性を演出。デザインはエルメスらしい洗練を極め、クラシックでありながら現代的な優雅さを感じさせます。さらに撥水加工が施されているため、憂鬱になりがちな雨の日でもエレガントにスタイルアップを叶えます。ぜひ店頭で、この特別な一着をお試しください。