エルメスが培ってきた卓越した革の縫製技術は、ブランドの代表作である革バッグや革小物の誕生につながり、世界中の人々から愛されるラグジュアリーブランドへと成長しました。1997年、エルメスのデザイナーに就任したマルタン・マルジェラ氏は、従来のエルメスの美学を尊重しながらも、新たな視点で再構築された革製品やウェアを数多く生み出しました。彼のデザインはシンプルでありながら奥深く、ミニマルで洗練されたシルエットが特徴です。マルジェラ期のアイテムは良質な素材を最大限に活かし、当時から高い評価を受けており、現在もなお伝説的な人気を誇ります。
中でも、1999年春夏コレクションで発表された「ヴァルーズ(Vareuse)」は、マルジェラ期を象徴する名作のひとつ。シンプルかつ洗練されたデザインは、エルメスの職人技とマルジェラの美学が融合した逸品として、今なお多くのファッション愛好家に愛されています。
今回ご紹介するのは、そのヴァルーズをベースにしたヴァルーズジャケット。テロンとしたシルクの質感が特徴で、軽やかで流れるようなドレープが生まれ上品な印象に。ノーカラーデザインのため、襟付きのシャツやヴァルーズニットと組み合わせるなど、幅広いスタイリングが可能です。もともとレディースコレクションとして展開されていましたが、マルジェラ期のアイテムはオーバーサイズシルエットが特徴であり、男女問わず着用できるのも魅力のひとつ。また、適度な丈感がシルエットを美しく引き立て、洗練された印象を与えます。
マルジェラ氏のデザイン哲学は、単なるファッションの枠を超え、女性に対する深い敬意を基盤としたものでした。その精神が宿るエルメスのマルジェラ期のアイテムは、時代を超えて色褪せることなく、人々を魅了し続けています。ぜひ店頭で、その魅力をお確かめください。