廃盤メンズモデル
「LIP / リップ」は1867年にフランス東部の街、ブザンソンで創業したウォッチブランド。長い歴史の中で高度なストップウォッチを製造したことから始まり、世界大戦ではフランス軍に腕時計やコックピットの計器類に採用、ブライトリングやブランパン等のブランドに時計を提供するなど、輝かしい功績を持つ素晴らしいブランドです。その一方で、1973年から、時計業界初となるデザイナー「Roger Tallon / ロジェ・タロン」を起用した時計作りに着手し生まれたのが「Mach2000 / マッハ2000」。TGVをデザインした有名デザイナーを起用した事で、時計業界に革命を起こそうとし、インダストリアルデザインを取り入れたこのシリーズは、今でもフレンチデザインを象徴する存在です。
今回ご紹介のRef.613970は、とても珍しい当時のオリジナル・クロノグラフになります。マッハ2000の特徴的な3つの球体のリューズがアクセントで、フェイス部分の左右非対称の直線と曲線のあるデザインは、実は人間工学や流体力学に基づいて創られ、これまでの伝統的な時計デザインを大きく覆した存在と言われています。9時位置に永久秒針、3時位置は30分積算計、6時位置にデイトを備え、淡いグリーンに彩られたクロノ秒針や積算計が、時刻を読み取りやすく操作性に優れ、着け心地も良いモデルとして、全ての細部に拘りを感じさせるモデルです。そして今回の個体は通常の3色の丸いカラフルボタンでなく、全てがブラックボタンとなり、シャープで引き締まるシブい印象のモデルの、筆者も復刻盤でも見たことの無い、初めて見るとても珍しい存在です。
搭載されているムーブメントはバルジュー社製キャリバー7734。ヴィーナス社が倒産した後、名機キャリバー188の製造を引き継いだ発展モデルで、ブライトリング等のクロノグラフに採用された実績もあり、手巻式、カム式クロノとしては最晩期の機械としての信頼性の高い、素晴らしいムーブメント。
ラバーブレスも当時から交換されていないメーカーロゴ入り純正ベルトなので、大切に保管されてきたと断言できる逸品。90年代から復刻モデルが展開されたクォーツモデルは多く見かけますが、今回のモデルは、とても貴重な存在であり、もう見ることはないモデルと言えます。とてもユニークなデザインでありながら、落ち着きとシブさを感じる不思議な存在、そしてクラシックな趣とは違う魅力ある素晴らしいモデルです。是非お手に取ってご覧ください。